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【書評】ホモ・デウス Homo Deus–A brief history of tomorrow

ベストセラー、ホモ・サピエンス全史の著者、ユヴァル・ノア・ハラリ氏の第二作。まだ邦訳されていない模様。

ヒトは幸せを追求し、飢餓、戦争、疫病を克服してきた。今、ヒトは神の領域に達しようとしている。安楽な衣食住に恵まれ、90歳まで生きる私たち戦後日本人は、確実に神に近づいているのだ。

一方、ヒトの幸せのために、この7万年間、環境と動物の命、幸福が凄まじいまでに犠牲になってきた。今日、地球上の大型動物のバイオマスのうち、2割弱がホモ・サピエンス(=人間)、7割弱がホモ・サピエンスに遺伝子改造された家畜であり、野生動物はわずか1割弱に過ぎない。今日の世界はヒトに覆い尽くされ、支配され尽くされている。人間に寄生する家畜は種としては繁栄しているものの、ヒトのいいように利用され尽くされるだけの人生を送る個体の苦しみは筆舌につくせないものがある。

ハラリは、「AIと遺伝子操作により<超人=ホモ・デウス>が誕生すれば、今度はホモ・サピエンスがこうした動物のステータスに転落する番だよ」と言う。データ主義、遺伝子学の知見、AIにより、「ヒトは皆同じ」と言う個人の平等や自由意思の近代的理念が根底から切り崩されつつあるからだ。「ヒトは他のヒトを、それがヒトであるというだけで大切にしなければならない」というのが、近代の理念だったわけだが、宗教的真理が近代になって虚構だと暴かれたように、今度は科学技術の進歩により、そうした近代的真理が虚構として暴かれようとしているのだ。

人類全体としてはホモ・デウスに向かっているとはいえ、神になれるのは豊かな一握りの人に過ぎない。FANGによるデータ独占、世界的な所得と資産格差の拡大、階級の固定化。こうした今見られる現象は、ホモ・デウスによるホモ・サピエンス支配前夜の、恐ろしい未来のプレリュードに過ぎないのかもしれない。

大きく喧伝されてはいないものの、ハラリは本書は瞑想の師であるゴーエンカに捧げられている。ベジタリアンのハラリは明らかに動物の運命を憐れみ、ホモ・サピエンス(特に近代欧米人)の所業の罪深さを嘆いている。イスラエル人なのに、外見もちょっと僧侶みたいなハラリ氏。仏教的価値観、あらゆる分野の碩学ぶり、しかも平易でわかりやすい文体により、本書は数多の将来予測書にない深みがある。

1度読んで、今、2度目の熟読中。人生の10冊に入る名著であり、どんなに時間をかけてももう一度は熟読したい本。

 

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