月別アーカイブ: 2017年8月

中国旅行(2):チベット、夏河、ラブラン寺

2008年の騒乱以降、チベット自治区内は外国人は個人旅行ができなくなっている。だが、それ以外の「チベット文化圏」の旅行は自由だ。15日以内の中国旅行の枠内でノービザで行くことができる。

チベット人人口の半分程度はチベット自治区以外に住んでいる。チベット文化圏はチベット自治区(TAR)以外にも、四川省、雲南省、青海省、甘粛省に広がっている。

https://tibetantrekking.com/wp-content/uploads/Tibet-Map-Large.jpg
AmdorとKhamの地域はチベット自治区に入っていないチベット文化圏

というわけで、今回は甘粛省の甘南蔵族自治区を訪問した。

私にとって2度目の「中国国内」チベット文化圏の訪問だ。

甘粛省の州都、蘭州を9時に出発して車で南西に進む。

蘭州駅。敦煌から高速列車で着く駅はこの旧駅から1時間ほども離れたところにある新しい駅だった。

途中、モスクが点在する回族の居住区(臨夏回族自治州)の永靖で回族料理のランチを食べた。

中華料理だが、豚肉の代わりに羊肉、ご飯の代わりにパン。。み物は、ジャスミン茶にナツメや氷砂糖などをいれたものだった。イスラム教徒の店なのでビールはなし。

羊肉は生のニンニクと一緒に食べるとよいとのこと。

 

見た目は綺麗だが、味は薄くてそんなに美味しくなかった

出発前はウィグル族と回族の違いすらわからなかったが、旅行しているあいだにわかるようになった。

回族はイスラム教徒だが中国語が母語。漢族と雑居している。

回族の清真料理のレストランは中国の至るところにある。日本にないのが不思議なくらい?回族の男性は白い帽子をかぶって、地味な服を着ている。

一方のウィグル族はトルコ系でウィグル語。主に新疆ウィグル自治区にまとまって住んでいる。

3時くらいにチベット文化圏、夏河(サンチュ)に到着した。チベット人の居住地域が近づくごとに高度が上がり、気温が下がり、快適な草原地帯になる。サンチュは標高2900メートル。さいわい、家族の誰も高山病の症状はほとんど出なかった。

中国の平原はどこも夏、暑いから、涼しい草原地帯のチベットは漢民族にとっても格好の行楽地になっている。

中国はマス・ツーリズムが爆発中。マイカーの個人旅行も多い。

ラブラン寺の前には広大な駐車場と巨大なレストランが整備されていた。

遊牧民の生活様式、チベット仏教の深い信仰、独特のランドスケープ。チベットは、日本人にとってと同じくらい、中国人にもエギゾチックなのだと思う(中国にもチベットにハマる若者がいるらしい。「蔵漂」と言うそうだ)。

IMG_2613

征服民は、非征服民を完全に支配し、人畜無害化する。そうしてしまったあとで初めて、「ここには何かがある!」とその文化が愛せるようになるのかもしれない。

ラブラン寺の周辺の草原では、チベット人遊牧民の定住政策が進められていた。

遊牧生活で家畜が草を食べ過ぎると草原の環境に悪い影響を与えるから、放牧地域を制限している、というのが中国の公式の説明だ。

一方、インドのチベット亡命政権は、「ちがう。数千年のあいだ、チベットの遊牧民こそ草原をサステイナブルに管理してきた。チベット人を置き去りにした中国による採掘や漢民族の移住、鉄道や軍事施設の建設が環境破壊をもたらしている。チベット草原を遊牧民の手に返せ!」と主張している。

中国がチベット族遊牧民による抗議を激しく鎮圧

 

中国は遊牧民を「近代化」し、その生活水準を引き上げようとしている。

どんな国も、国民の生活を「近代化」し、その生活水準を引き上げようとするものだ。

そして、「近代化」の度合いは、年収や識字率や医療へのアクセスや平均寿命によって測られる。

かりにチベットが独立国だったとしても、やはり自国を近代化しただろう。だから、遊牧民の生活は、たとえ中国の関与がなくてもやはり、昔ながらのままではないだろう。

歴史を紐解けば、遊牧民が農耕民族を圧倒した時代もある。むしろ、その時代の方が長いほどだ。モンゴルの遊牧民は中国に侵入し、そこの農民の生活を見て、不潔で暑苦しい環境でチマチマと暮らしている中国人を心から軽蔑した、という。

だが、時代が進んで近代になると、遊牧民の分はどんどん悪くなっていった。

「この人たちは計算ができない。怠け者だし仕事が遅い。祈ってばかりで非生産的。一生お風呂に入らない人もいる。女性はパンツも履いていないし、家にはトイレもないのよ」ーー若い美人の中国人ガイドはチベット人についてそう言った。

定住して遊牧しなければ、一世代で遊牧のし方も完全に忘れてしまうだろう。

1日中、やることがなく、ブラブラと定住地区を手持ち無沙汰にうろつく若者たち。観光客に踊りを見えたり、馬乗りをさせたり、テントの中でチベット服で写真撮影することでかろうじて現金収入を得る人たち。その横で大量の観光客向けの大規模な土産屋を牛耳っているのは漢民族ばかり。

 

アリゾナを旅行したときに見た、インディアン居住区のインディアンと似ていた。

物質的には良くなっている。でも文化や自活力は刻々と失われている。

プライドや自主性を剥ぎ取られ、茹でガエルのように二級市民、見世物としての存在に落とし込まれていく。言葉も、コミュニティも、協力し、再生産していく力も考える力も剥ぎ取られていく。。。

2010年以降、焼身自殺を選ぶチベットの若者が理由がなんとなく理解できるような気がした。

焼身自殺しか策がないチベットの悲劇

もし、チベットが独立国で、チベット人がチベット高原を自分の国として管理していたら、彼らはどのように暮らしていたのだろうか?

もし、これから中国から独立を勝ち得たら、チベット人はチベットをどんな国にしようとするだろう?

中国が分裂したら?

そんなことを考えながら、草原を歩いた。

遊牧民は、踊りを踊ったり、馬に観光客を乗せたり、「観光」が生きる道担っている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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中国旅行(1):万里の長城、紫禁城

夏休み、北京と甘粛省を旅行した。

空港、ホテル、道路、観光施設。。。中国はなんでも日本より一回り大きい。それが今回の旅行の一番の感想。

社会主義が壮大さを好む、ということもあるだろうし、国土も人口も多いから、なんでも大きい方が便利、ということもあるだろう。

中国以外だと、アメリカもなんでも大きい。だが、その大きな理由は、アメリカ人の身体が大きいから、という気がする。

では中国人はどうか、というと、身長や体重はほぼ日本人並み。

個人の体格に合わせてモノが大きいのではない。

また経済成長して豊かになったから、大きく作れるようになった、ということでもなさそうだ。豊かでなかった時代のモノも大きいのだから。

民族的特徴でもないと思う。同じ中国人の国である台湾や香港、シンガポールに行っても「何でもでかい!」とは感じない。

万里の長城、紫禁城、莫高窟。。。今回、訪れた名所旧跡はため息がでるほど大きかった。

紫禁城

中国のモノが大きいのは、統治範囲が広く、社会が大きく、権力の集中が激しいから。つまり、中国が帝国だからだ。

中国から日本を訪れる中国人は、私たちの国を小人の国のように感じ、その小ささに感動するのではないか?あらゆるものが箱庭みたいに華奢で、きめ細かい日本。。。

アメリカが大きい国になったのは、現代的な輸送手段や石油文明が発達してからだが、中国は近代の科学技術が発達していない昔から大きな国だった。

中国は他のどこの地域より前から統治機構が発達し、通商が盛んで、中国人は土木建築技術に優れていた。

アメリカは小さい共同体が集まって大きくなった感じがある。一方、中国はそもそも社会がもともと大きい。

中華帝国に比肩する世界帝国はローマ帝国だろう。ローマ時代の土木建築はやっぱり、大きい。

ローマ帝国はとっくの昔に滅びたが、中華帝国はバリバリの現だ。

ローマの支配地域は現在、小さい国民国家=ヨーロッパ諸国に「分裂」している。分裂した状態が当たり前となり、現在に至る。

これに対し、いまでも中国は統一されている。今も始皇帝が統一した時代の中国と同じだ。それどころか、チベットやモンゴルやウィグルも併合しているから、古代の時代よりもっと大きくなっている。

そこに13億人が住んでいる。人口は日本の10倍、アメリカの4倍。その13億人が、北京語を話し、ウィーチャットを使い、アリババで買い物している。同じ制度、統治機構の下で暮らしている。

アリババのマーCEO。成功も桁外れ

大企業と中小企業では統治の原理も成功の定義も個人の行動様式もまったく違ってくる。

それと同じくらい日本と中国には感覚の違いがある。

ちなみに、日本の10大都市の人口はこんな感じ。

1 関東大都市圏 3,692
2 近畿大都市圏 1,934
3 中京大都市圏 910
4 北九州・福岡大都市圏 551
5 静岡・浜松大都市圏 274
6 札幌大都市圏 258
7 仙台大都市圏 217
8 広島大都市圏 210
9 岡山大都市圏 165
10 新潟大都市圏 142

(万人、ウィキベディアより)

一方の中国はこんな感じ。

1 広州 4,429
2 上海 3,596
3 重慶 3,016
4 北京 2,150
5 抗州 2,110
6 武漢 1,978
7 成都 1,800
8 天津 1,600
9 西安 1,356
10 済南 1,300

(万人、ウィキベディアより)

日本は同質的、東京一極集中の雁行型。一方の中国はさまざまな勢力を力づくで統一している感じ。

日本と中国、日本人と中国人。そんな風に二項対立で考えることがそもそもナンセンスに感じられるほどアナザーワールド感たっぷりの今回の中国旅行だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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