貧しさと大気汚染

隘路の先に突然、現れるカトマンズの中心街のダルバール広場の美しさには息を飲んだ。

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建物はどれも高層かつ壮麗で細部まで細工が施され、シルエットも色もエレガントで美しい。広場は実にひろびろとしていて、人々がくつろいだり、モノを売ったり、おしゃべりするスペースが至ところにある。

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カトマンズの都市の造形はアジア的というよりヨーロッパ的。フィレンツェやパリとも似ている。

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カトマンズは昔からインド、ネパール、中国の重要な交易路だった。このような広場が作られた15〜16世紀のカトマンズはどんなに洗練され繁栄した都市だったのだろう。

ああ、それなのに…

観光写真に映らないのは、ひっききりなしのオートバイのクラクションの音と、人や動物の往来が生む混乱。粉塵で満ちた大気。ごみの腐臭。

道行くカトマンズの市民の大半はマスク姿。世界中で最も大気汚染が深刻な都市は北京かデリーと聞いていたが、本当はカトマンズではないかと思うほど。これより悪い空気はちょっと想像できない。

カトマンズの大気汚染の主因は、舗装されていない道路の粉塵、ディーゼル規制の欠如、郊外の建築ラッシュだそうだ。そして悪さをするのが盆地地形。ヒマラヤの山々に囲まれているせいで風邪が流れず、盆地全体が絶えず排ガスにすっぽり覆われた状態だそうだ。

これまで公害や空気の悪さは産業の発達や人々の生活水準の向上と関係があると聞いてきた。

だから、高度成長が続いて自動車が増えている中国の首都、北京の空気が悪いのは理解できる。

でも、なぜカトマンズ?

ネパールは世界最貧国の一つだ。首都カトマンズの庶民の生活水準はとても低い。中世からあまり変わっていないように見える。街に水や空気を汚す重工業の工場は皆無だ。高速道路もなく、自動車も少ない。一日の3分の2が停電しているこの街にはエアコンも暖房もガス湯沸かし器もない。隘路にトラックが入れないから、物流の担い手は人力だ。庶民は葉っぱで作られた皿に載った野菜中心の簡素な食事をする。服も家も簡素だ。水洗い場で沐浴し、洗濯板で洗濯をする。プラスチック製品が少ない。すごくエコな生活だ。ネパール人の一人当たり二酸化炭素排出量は恐らく日本人の数パーセント程度だろう。

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そんな自然でエコで倹しい人々の住む街の空気が最悪なんてすごいパラドクスだ。

ヒマラヤ地方全体の環境は中長期的に劣化しており、その主因は人口爆発だそうだ(この本参照。ネパールの人口はこの20年間で2000万人から3000万人に増えた)。またカトマンズでは都市計画や規制が全くないか、あっても機能していないように見える。

世界一、石油を浪費する人工的なアメリカの都市はどこも整然として美しかった。ホノルルもサンフランシスコも大気汚染なんてない。ネバダ州のフーバーダムの建設は大変な自然破壊に違いないが、それによって深刻な副作用が生まれたとも聞かない。砂上の楼閣ラスベガスは今日も大量の石油を浪費し、ガンガン大量の無駄を生みながら、大繁栄を続けていて、神の罰が当ったとは聞かない。。

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ヨーロッパや日本も、過去の問題のある時期を経て、今は国民の高い生活水準と衛生的な環境が再生産されている。空気が綺麗なことは当たり前のことだ。

贅沢で清浄で静寂で快適な環境を享受しながら、エコや自然を語る先進国の人たち。生活水準が向上しないまま身を守る術のないまま、汚染された環境に晒されて、健康を害してもその日その日をサバイバルするしかない貧しい国の人たち。

ギャップが大きすぎる…

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