米の時代から金の時代へ

日本の神社は古びてくると、壊してまた作り直す。物質を壊してゼロから作り直すことで、同時に人心や組織に溜まった澱を一掃し、精神を再生しようとする。

今年は、20年の一度の伊勢神宮の遷宮と出雲神社の60年の遷宮が同時に行われたとても珍しい年だったそうだ。伊勢神宮では東側の「米座」から西側の「金座」にご神体が移動した。ちなみに御神体が米座にある時代は精神の時代、金座にある時代は物質の時代と言われているらしい。今年は日本にとって過去20年の精神の時代を経て、今後20年の物質の時代に突入した年ということになる。

伊勢神宮HPより

伊勢神宮HPより

20年前は1993年。バブル崩壊が鮮明になり、以後、私たちの賃金はゆっくり下がり、モノの値段も下がり、日本は長いデフレと内省の時代に入った。人々はモノを買わなくなり、「エコ」、「ロハス」、「天然」、「エシカル」といったキーワードの株が長期的に浮上した。

たしかに、未来から見ると、2013年は潮目が変わった年として記憶されるような気がする。

一昨年末に自民党政権に回帰した後、株が上がり、企業業績が良くなり、長く続いたデフレに歯止めがかかった。高額商品が売れるようになった。当初、アベノミクスのモメンタムは半年しか続かないと言われたが、景気は夏以降も腰折れることなくジワジワと良くなり続けた。そして秋に2020年の東京オリンピックが決まり、都心の再開発の機運が高まり、ゼネコンの業績が良くなり、不動産取引が活発に行われるようになった。築地移転はあっけなく最終決定し、沖縄の基地問題も年末にはカネの力で解決。中国の脅威が高まる中、「強い日本」を目指すことへの国民のコンセンサスは強く、安倍首相の靖国参拝にも国論が2分される気配はない。好景気だった1980年代が再びブームとなり、あまちゃん効果で薬師丸ひろ子や小泉今日子さんなど、元気な旧アイドルが活躍した。

パーソナルファイナンスの観点から見ると、「日本円を現金で持っているのが最強のデフレ時代」の状況から、「モノ=株、不動産を保有する時代」に状況は移行した。株価は、企業業績とはあまり関係なく円安に反比例して上がる。つまり、円が減価する中、日本円のキャッシュの保有によって、金融緩和を背景としたグローバルな資産インフレの動きから取り残されることになり、株や不動産を保有することで初めて日本人は世界についていけることになる。私が住んでいた2010年に65円だったシンガポールドルは今は83円。当時2ドル=130円で食べられたホーカーのチキンライスは、シンガポールドルの値上がりと物価上昇によって3倍から4倍にもになっているという。円安の進行で日本人に割安感のある外国は姿を消しつつある。

おそらく来年の消費税上げに伴い、我慢していた業者によるモノの便乗値上げが一斉に起きるだろう。政府と日銀が目論んだ物価上昇がいよいよ実現し、私たちに実感されるようになるのだ。インフレの時代はその波に乗る勝者と取り残される敗者の差がよりはっきりする。人々は、世の中の流れについていこうとモノを売ったり、買ったり、デフレの時代よりずっと慌しく動き回るようになる。世の中はせわしく、ケバケバしくなり、鬱が主流の時代から躁が主流の時代になる。そう、80年代のように。

20年は個人の人生のスパンでは相当に長い時間だから、20年毎の変化を見つめることはそれほど簡単ではないものの、もしかしたら私個人の人生も、今年くらいから「米の時代」から「金の時代」に移行し始めているような気がする。といっても、清貧生活から、成金生活に突然変わり、ブランド品を買い株の売買に明け暮れるようになるわけではない。日常生活は変わらないものの、自分のモノの感じ方が少しずつ変化し、過去当たり前だったことに違和感を感じるようになり、それによって行動も生活のスタイルも徐々に変化したのが今年だった。

私は経済の勉強をしてその後も金融業界でアナリストを生業にしてきたから、20代以降、勉強をしたり、本を読んだり、学んだり、考えたり、書いたりする時間がとても長かった。そして35歳からの11年間は小さい子どもの世話があったから、仕事に全力投球した時期が遠くなってかなり久しい。

それがこの数年で少しずつ変わりつつある。もっと自分自身らしくありたい、インプットよりアウトプットを重視したい、考えるだけでなく行動したい--という気持ちが自分の中でこれまで以上に高まっている。また気持ちが高まっているだけでなく、それが出来る環境が少しずつだが整いつつある。今年3月に単著を出せたこと、秋からこのWordpressの実名サイトでブログを書き始めたこともそうした変化の1つだ。

そして来年はより大きな変化が起きるような気がする。

できれば悪い変化は避けたいが、物事の変化が良いものなのか悪いものなのかは、長い目で見て振り返ってみなければ分からないものだ。生きることは変化し続けること。だから、どんな変化も恐れずにいたいし、変化を歓迎したい。

ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。10月から定期的に読んでくださっている皆様、本当にありがとうございました。

来年が皆様にとって素晴らしい1年となることをお祈りします。新年のブログは1月6日から始める予定です。

下山 明子

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