空飛ぶ長距離バス

マレーシアの格安航空会社(LCC)のエアアジアでクアラルンプール経由でカトマンズを一人旅した。エアアジアはシンガポール在住時に頻繁に利用したが、東京からの利用は初めて。行きも帰りも羽田発着だ。

結果的に…コスパは最高だった!

LCCがLCCたる所以はフリンジなサービスを一切省いて格安な航空券を提供するところにある。機内食は有料で要事前予約。ブランケット、イヤホン、枕、預け荷物や保険も全て有料でオプション制。当然のようにブランケット、イヤホン、枕など何も頼まず、最低限の水と食事だけ。

LCCの飛行機は空港ターミナルから搭乗口までが離れていて、客は荷物を抱えてトコトコ滑走路を歩かないといけない。だが、それすら一昔の海外旅行みたいで外国に行くワクワク感が高まるし、待ちくたびれた身体には運動不足解消にもなる。多少のお金を払えば、空港ラウンジを利用できるし、隣の空いた席や足の延ばせる席にアップグレード出来る。

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飛行機を利用する乗客が一番、重視するのは運行の安全と正確さだ。エアアジアはいくら格安でも、そこが犠牲にされている感じは全くしなかった。事故を起こしたらLCCは途端に潰れる。老朽化したボロボロの飛行機をいい加減なパイロットが運転することでコストを下げているわけではないのだ。私が搭乗したのはいずれもピカピカのエアバス•ジャンボジェットで、機長の機内アナウンスの声は綺麗なクイーンズイングリッシュだった。離陸も着陸も実にスムーズ。最後の東京の大雪による6時間の遅れ以外、カトマンズでもクアラルンプールでも発着は全て定刻通りだった。

エアアジアのCAの平均年齢はJALより15歳以上若そうだ。あのピタピタのボディコンな制服は30歳を過ぎたら着られないだろう。大半はマレーシア人だから平均賃金はJALの従業員の半分を遥かに下回ると思われる。事前ウェブ予約された様々な種類の機内食は極めて要領よく、効率的に配膳された。笑顔でキビキビしていてサービスに何の問題もなし。CAという職業は人材グローバル化の最前線。若くて美しく、英語を話す途上国の人材は実に豊。人件費の高い日本人はなりたくてもなれない職業になっていくだろう。

東京—クアラルンプール便は日本人やマレーシア人の観光客が多かったが、クアラルンプール—カトマンズ便の9割以上は、ネパールからマレーシアを往来する若い男性の出稼ぎ労働者たちだった。2月のローシーズンにも関わらず、ジャンボジェットの座席は行きも帰りも満席。実に商売繁盛なエアアジア。

もともとエアアジアのビジネスモデルは、観光客やビジネスマンではなく、ワーカーやメイドといった国境を超えたアジア地域の移民労働者の移動手段として想定されたものだったという。アジアの庶民は皆、長距離バスで移動する。そう、エアアジアは「空飛ぶ長距離バス」なのだ。庶民のための長距離バスに余計な高付加価値サービスは求められない。求められるのはひたすら目的地まで安全に速く移動することだ。アジア域内のヒトの移動の裾野が広がる中、今後、こうした商売がさらに発展しないわけがない。

同じアジアでも、北東に偏在し、経済発展段階や民族、言語が異なり、かつ移民労働者が少ない日本は、これまで東南アジアの安価で快適なサービスから遮断されてきた。私たちには、日本人の手が介在した高価で高付加価値なサービス以外のサービスを選ぶ選択肢がない。

そうした中、エアアジアの日本市場参入、羽田就航は実に画期的だと思う。エアアジアのおかげで、私たちはまるで長距離バスで名古屋に行くような感覚で気軽にカトマンズにまで行けるようになった。

とはいえ、クアラルンプールからカトマンズに向かう機内は、見渡す限り、額の中央を深紅に塗りたくり、目をギョロギョロさせた痩せて小柄なネパール人の男たちばかり。私の所得の数分の一の貧しい人たちであり、東京の日常では決して出会うことのない人たちだ。

空飛ぶ長距離バスによってお気軽に訪れたカトマンズ。それは私が知ったほかのどの街とも違う街だった….

 

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