熱帯の暑さ対策

昼間は30度、夜は25度を過ぎると、頭がまともに稼動しなくなる。それが東京では長く続くから、7月、8月、9月は意に反して思い切り活動がスローダウンしてしまう。

だがそんな私が年中25度〜30度、不快指数全開の熱帯の国、シンガポールで2年間過ごしたのも紛れもない事実だ。

初めて訪れたシンガポールでは、「なに、この気候〜。。。」と絶句したのを覚えている。曇っているのに蒸し暑い。鉄筋コンクリートの高層ビルばかりの都会で、街には中華料理の肉とスパイスの匂いが漂っている。少し歩くだけで身体はベタベタ、化粧は流れ落ちる。木々の緑の間から流れる風も全然、涼しくなくて生温い。

ところが、何とか生き延びたどころか、ずっと住み続けたくて帰国するときには泣きの涙。シンガポールで暑くて苦しくてスローダウンしていたのは最初の1ヶ月だけだ。

熱帯の生活に適応してみれば、年中、素足にサンダル同じ気候で衣替えがない生活は実にらくちん。日本の始終変化し続ける四季のある気候が煩わしく感じられたほどだ。

なにも私の環境適応能力が人より優れていたわけではない。ロシア人や、イギリス人など、寒い国から来た白人も、皆、シンガポールに馴染んでいた。どうしてそうしたことが可能だったかといえば、常夏の都市、シンガポールでは、暑さ対策が他のどんな地域より進んでいたのだ。

もちろん、エアコンの存在は大きい。リークアンユーが言ったように、石油を大量消費するエアコンがなければ高温多湿の風土の地、東南アジアの産業の発展は絶対、あり得なかっただろう。東南アジアの都市では中心部のオフィスやホテル、ショッピングセンターはどこも日本人の感覚では寒過ぎるほどキンキンと冷えている。この人工的な冷えがなければ、熱帯で都会的なお洒落や食事、スポーツを楽しんだり、快適なIT生活を送るのは不可能だ。

だが思い返せば、エアコン以前の段階に考えだされた熱帯の生活を快適にする基本的仕組みもまた、至るところにあった。それは次のようなもの。

1 石で出来た床、ステンレスの食器

クッションや起毛の素材はもともと防寒目的で開発されたもの。だから、絨毯やウレタンといったものは、25度以上の気候の場所では全く不要。というわけで、シンガポールはエアコンが効いた特定の場所を除き、フカフカしたものが実に少なく、ツルツルしたものが多い。家の床は大理石。地下鉄のベンチはアクリル樹脂。あと、食器も陶器製より金属製が多い。ステンレスのチリレンゲで食べるシンガポール風かき氷は美味しかったな!

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2日差しを徹底カット

東京の夏がとりわけうんざりと感じられるのは、横断歩道を待つ間の強い日差しとアスファルトの照り返し。不思議なことにシンガポールではそうした経験があまりなかったように思う。原因は、夏仕様のシンガポールの街は庇(ひさし)が発達していて、極力、炎天下の下を歩くことがないように作られていたからだ。日本人の女性や子供は夏に帽子を良くかぶるが、シンガポールでは帽子をかぶった人を殆ど見なかった。しかも、意外なほど色白の人が多い。これは、ローカルの人が、そもそも日常生活で帽子で紫外線をカットしなければならないほど炎天下に晒されることがないことを示している。

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3 蚊のいない街

東京の夏がイヤなもう一つの理由は、都会のくせにやたら蚊が多いことだ。だから夏の公園には立ち寄れないし、家の網戸もしっかり閉めておく必要がある。寝苦しい夜に「ウィーン」という蚊の飛ぶ音が聞こえるともういけない。咬まれたところを掻き散らかすと、跡が残ったり湿疹になったりする。ところが、年中、東京の夏と気温も湿度も同じで緑も多いシンガポールには全く、蚊がいなかった。デング熱の伝染防止のため、水たまりを作らず、殺虫剤で蚊が発生しないようにする施策が徹底しているからだ。虫もいない街というのは風情がないようにも思えるが、実用の観点でみると窓を開け放しても蚊が入ってこず、緑の中を散歩しても刺されない生活は実に快適だった。

4 流れる空気

シンガポールのホーカー、ウェットマーケットなどでは、屋外のエアコンのない施設には必ず長い庇がついていて日差しが注ぎ込まないことに加え、天井に大きな扇風機がついていた。また、家も玄関が格子戸になっていて空気が流れるように工夫されていた。

「四季がある日本という国は素晴らしい」と私たちは子供のときから習って来た。だがシンガポールに住んでみて、四季がない生活もまた素晴らしいということを私は学んだ。

冬もある東京では、マンションの絨毯をひっぺがすことは出来ないし、炎天下の横断歩道を渡らないわけにもいかない。でもせめてチリレンゲを陶磁器製からステンレスに変えて、家中のぬいぐるみやクッションを一切、倉庫にしまってしまうことは出来る。

温暖化により東京では冬より夏の方がはるかに厳しくなっている。将来、自分の家を建てることがあれば、必ず熱帯式の長い庇が付いていて風が通る家を作ろうと思う。

 

 

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熱帯の暑さ対策」への1件のフィードバック

  1. p

    慣れなんですかね。先日、初シンガポールでびっくりしたのは暑い中オープンエアの利用者が思ったより多かったことです。

    旅行者の自分はギャツビーのフェイスティッシュが手放せないほど汗がダラダラ、午後には全身がベタベタという悲惨さだったのに。

    返信

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