業界の檻

考えてみればいろいろな仕事をしてきた。

業界で見ると、格付け業界、証券業界、銀行業界に、損保業界。そ翻訳業界や骨董品業界も覗いた。

さまざまな人がさまざまな業界で働いていた。

どんな業界にもビジネスの仕組みがあり、競争があり、そこに働く人々がいる。

そういう大枠は同じなのだが、モノの売り方や競争の仕方は業界によって実に多様だ。規制当局に対する目線や、新商品が出る頻度。生産する人と販売する人、管理する人の力関係。ピラミッドを上昇していく方法。業界秩序を維持する方法。新規参入や撤退の有無と動機。。。。

業界の掟は長年の暗黙知の上に作り上げられたもので、そこに新しく入る個人にとっては外国語を学ぶ時の文法のようなものだ。外国語を学びたいなら、しのごの言わずに、まず動詞の活用を丸暗記しなければならない。同じように、個人が1つの業界に入り、それなりの成功を目指すなら、何よりもその業界の特定の掟を学び、身体に染み込ませていかなければらない。

業界の文法は、いつしかその人の思考経路や性格を作り上げる。40歳を過ぎる頃にはどんな業界に所属しているかで、ランチに何を食べるかや歩き方すら変わってくる。そして、その業界の掟を知悉し、適応し、その文法を使って自在に自己実現できる人が成功を収めるようになる。

保険業界、銀行業界、証券業界。外部から見れば、同じ金融業界だが、中に踏み入れば、この3つの業界の中に人々の顔立ちは違う。人生に対する立ち向かい方も、困難の克服の仕方も違う。

業界や職種は一種の檻のようなものだ。檻の中の状況や、檻の中で働く人々に求められるものは極めて多種多様であり、「何をすべきか?何が正しいのか?」について業界や職種の檻を超えた普遍化を行うのは難しいことが多い。

たとえば、「秒速で1億円稼ぐ条件」や「コア・コンピタンス経営―未来への競争戦略 (日経ビジネス人文庫)」のようなビジネス本は全て、あらゆるビジネスマンに向けて書かれたものだろう。でも、それを読んで自分の職業生活に本当に生かせるのは、前者の場合、ネット業界の人だけ、後者の場合、経営に携わる立場の人だけだろう。「有効読者層」は想定されるターゲット読者の母集団の僅か数パーセントに過ぎないはずだ(たとえば、損保の営業担当者がこうした読んだって、日々の成績と生活の改善には何らつながらないだろう)。

どんな業界を選ぶかは、アメリカ人に生まれるか、日本人に生まれるか、英語が母語なのか、日本語が母語なのかの違いと同じくらい重要だ。それは、単に生涯給与の水準や雇用の安定性、働く場所だけの問題ではない。思考回路や人生に対する態度すら左右するのだ。

どの国に生まれるかは自分で決められないが、今の時代、どの業界に入るかはある程度自分で選べる。

業界選びはくれぐれも慎重に。。。。

 

 

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