地べたに座って食事をする

東南アジアのレストランでは、見よう見まねでカレーを手で食べていた。

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さらさらしたインド米のご飯を手で掬って食べるのは至難の技。ライスと具を適当に混ぜて、指の筋肉を巧みに使って、キツすぎず、ユルすぎず、丁度良い力でつまむ。落っこちないうちに、そっと口に運ぶ。汚して良いのは右手の親指、一差し指、中指の第一関節だけ。左手は使わない。

慣れてくると、指で食べ物を触り、掴み、口に入れて、指をしゃぶる感覚に病付きになる。肉感的で、まさに地の恵みを体内に入れる。。。という感じがするのだ。スプーンやフォークのなんと無機的で味気ないこと。とてもこんなものを使って食べられない、という気分になる。

それに、カレーのように汁系の食べ物を手で食べるときには絶対「ながら食べ」が出来ない。オフィスのデスク•ランチの習慣が抜けない私は、1人で食事をする時は、ついつい本や新聞を拡げて読みながら食べていた。必然的に、良く食べる食べ物は、サンドイッチ、ハンバーガーなど手の汚れないファーストフード系フィンガーフードになる。

手で食べるのは同じでも、ファーストフードとインドのカレーは正反対だ。インド式は右手がベタベタになるから食べ物以外の何も触れない。また目でしっかり食べる対象を見つめないと掴むことも出来ないから、読み物をしながら食べるなど言語道断。

だからシンガポールに住んでいた時、1人でレストランに入り、手でカレーを食べる時間は、100%食べ物を楽しむ時間だった。まず、食前に丁寧に手を洗う。手で食べると慌ただしく搔き込めないから、必然的にゆっくりゆっくり、丁寧に食べ物を楽しむ。ゆっくり食べるから徐々に血糖値が上がり満腹になる感覚が分かる。様々な野菜の異なる食感や匂いを手と、口と、胃で楽しむ。まさに食べる瞑想だ。そして食事の後は、席を立って丁寧に手を洗うという締めの儀式がある。

帰国してもインド料理を食べに行くが、もう手で食べる機会はない。自宅やレストランでの1人ご飯は、PCやスマホを見ながら、上の空で猛烈な勢いで食べることが再び多くなってしまった。

そんなとき、懐かしく思い出すインド式の食習慣。でも、さすがにご飯とみそ汁やパスタを手で食べるわけにいかない。フォークや箸を軽々と右手で操りながら、ついつい左手は退屈しのぎの雑誌やiPadに手が伸びる。

そこで新たに試してみたのが地べたに座って食べる食事だ。

食事をお盆に載せ、運んで、床の上に置く。盆の前に正座あるいは胡座で座る。テーブルも椅子も、座布団も使わずに、食べ物と対峙する。

原始人はこうやってモノを食べていた。インドや東南アジアの農村地帯ではこれが標準的な食事方法。西洋式の机と椅子の生活が始まる前は、日本もこうした食べ方が一般的だった。

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やってみると、手で食べるのと似た効果がある。

テーブルより床はよほど口から遠いことから、床に置いてある食べ物を落とさないで口まで運ぶには、たとえ箸やフォークを使っても注意深さが必要だ。よそ見をしている暇はない。

それに、足を折ると、身体のバランスを取るのが椅子に座っているときよりずっと難しい。ネジ曲がった姿勢では食べられないし、左手に気を取られながら食べ続けることもできない。後傾していたら食べられないので、自然と前掲気味になり骨盤が立つ。悪い姿勢では食べられない。

一度やってみてとても気に入った。

食べる以外のことが出来なければ、上の空で余計な妄想もしない。目の前に与えられた食をシンプルにマインドフルに楽しみ、与えられた恵みに感謝できる。

テーブルと椅子はあまりに楽で便利なものゆえ人間をあまりに怠惰にしているのかもしれない(→パソコンを立ってやる)。

最近、集中力が衰えて来た方、ストレスで食べ過ぎの方、慌ただしさに疲れている方。だまされたと思って机と椅子を捨ててこの昔ながらの食事方法をお試しあれ!

下山明子

追伸:明日から一週間夏休みで山登りしてくるので、ブログをお休みします。26日の週に再開します。

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