名取美和さん

イネス•ド•ラ•フレサンジュに代表される、女がいつまでも女を捨てず、若い頃のスタイルを維持するフレンチ•スタイルは素敵。だがもう一方で名取美和さんのようなまるで正反対の、性的要素を完全に削ぎ落とした尼僧のような中高年の風貌にも憧れる。

名取美和さんは、タイの古都チェンマイ郊外でバーンロムサイという孤児院の経営をしておられる方。彼女について書かれた本の表紙の写真の風貌の「抜け感」にまずノックアウトされた。そして本を読み、彼女の生き方や現在の仕事にますます興味を持つようになった。

生きるって素敵なこと!

グレーのベリーショートのヘアスタイルに、化粧っ気のない顔、アクセサリーのないシンプルなスタイルからは、温かい人柄と強い意志、ユニークな個性がダイレクトに伝わってくる。実物は一体どんな方なんだろう。一度お会いしてみたい!

髪の手入れ、爪の手入れ、スタイルの維持。。。。女性は年を取っても「女」を維持しようと思うと外見のメンテにかかる時間とコストが増えてくる。人間力や充実した生活に加えて、そうした外見上の努力が結びついて初めてイネスやソフィー•マルソーのような奇跡のようにセクシーで素敵な中高年女性が出来上がるわけだ。だが、外見に対する過度の配慮と執着は、若さと性的魅力という、すでに失われてしまった過去に対する執着心や虚栄心の反映に過ぎず、一つ間違えば、白塗りの能面は執着心と所有欲で凝り固まった内面の醜さを照らすだけのものにもなりかねない。

たとえば、女性は一体、何歳まで白髪を隠して髪を染め続けるべきだろうか?マスカラやま二キュアは何歳まで付ける?タイトスカートにハイヒールは何歳まで?女性ホルモン剤は死ぬまで飲み続けるの?

年を取ってもバリバリの現役で、若い女性の向こう側を張るような美しい中高年女性は確かに増えたし、今後も増えるだろう。でもそれに比例して、ユングの言う「太母(グレートマザー)」のような風格や慈愛のオーラを放ち、若者と異なったステージのスピリチュアル性を感じさせる女性は減っているような気がする。

思えば昔通ったカトリックの女子校で教えを受けた修道女の中には太母の風格のある女性が何人かいた。化粧っ気がなく、質素でシンプルな生活を送り、執着心がなく、優しく、清潔で、雄々しくて。

人間の持つ負の部分や弱さをおおらかに受け入れられる人格力。

花街の老女にも、たまにそういう清潔感を放つ人がいる。

名取美和さんの風貌はそういう精神性を感じさせる。

キーワードは潔さとシンプルさだろうか。

この本が書かれたときの彼女は50代。その風貌は決して「若々しくて綺麗」ではない。

だが、逆説的に、過去を維持しようとして若さに執着する人にはない、清潔感と瑞々しさとスピリットがある。

若い人には持てないスタイルと風格がある。

名取さんは朝吹家にも連なるハイソで裕福な家柄の出身、著名な写真家の娘。若くしてドイツに留学し、高級車やヨーロッパの生活、美しいインテリアを愛する人。雑紙の海外取材コーディネーターや六本木での西洋骨董商生活など、高度経済成長時代に、日本で文化的にも経済的にも恵まれた上澄みの人のみが許される仕事や生活を送ってきた人だ。

2度の結婚離婚やシングルマザー生活、度重なる引っ越しなど私生活は奔放、気まま。道楽者の放蕩娘と言えるような前半生である。

そんな彼女が53歳にして出会い、68歳の今も続けておられるのが、HIV感染孤児のタイ人児童を養育する孤児院の経営の仕事。多分、そこが自分自身とその居場所を探し続けてきた彼女がたどり着いた、本来いるべき場所だったんだろう。チェンマイの美しい環境に根を下ろして家族を創り上げ、センスを活かしたホテルやレストランを展開し、独自のデザインの製品を販売しながら孤児院を運営する彼女の顔は本当に美しく、そのライフスタイルや仕事は光を放っている。

20年後に彼女のような顔をしていられたらな。

と思ったら、彼女がチェンマイに移住し孤児院運営を始めた53歳は私にとってわずか6年後。

本によれば、彼女は移住の数年、40代後半からいろいろなことに行き詰まって抑うつ状態を体験しているようだ。

私がファンデやマスカラを塗るのを止めて、髪の毛を白髪のままにするのはいつだろう? そうしたとき、私はどんな顔をしていて、他人や社会とどのような関係を持っているのだろう。

今はまだ、勇気がない。。。。

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