プラセボと価値

ブラセボ:本当の薬のような外見をしているが、薬として効く成分は入っていない、偽物の薬のこと。プラセボ効果とは、偽薬を処方しても、薬だと信じられることで何らかの改善が見られること。(Wikipediaより)

製薬会社に勤めていた義父によると、ドラッグストアで最も利益率が高いのは、入り口付近に並ぶ栄養ドリンクだそうだ。

安い栄養ドリンクは150円程度、高いものだと3000円以上。最も安価な栄養ドリンクも、コーラなどの清涼飲料より高い。中身は清涼飲料と大差ないのに。

ただでさえ高利益率の栄養ドリンク、価格が上がるにつれ、原価率はさらに低下する。高級ドリンクは価格の大半が利益だから製造業者にとっても小売業者にとっても美味しい商売なのだ。

清涼飲料と違い、栄養ドリンクに適正価格はなく、値段が高ければ高いほど、「効く」感じがする。買い手にとって、栄養ドリンクは金を払うことそのものに意味があるから、逆に値段が安ければ困るのだ。

化粧品や健康食品、サプリメントも栄養ドリンクと同じ。

飛行機のビジネスクラスも同じ。空港ラウンジの利用、ゆったりとしたシート、美味しい食事、良いワイン、良いサービス。付加的なサービス全体の原価を足し込んでいっても、エコノミークラスの3~4倍の値段を正当化できる違いにはならない。だからビジネスクラスの料金は「一流企業が社員の出張に払えるだけの」シンボリックな価格設定に過ぎない。だからビジネスクラスの空席が増えると航空会社の収益性は下がるのだ。

最高にプラセボでシンボリックな世界がワインの世界だ。スペインやチリのスパークリングワインと本場フランスのシャンパンの製造方法や原料に本質的な違いはない。3~20倍の価格差と利益率の違いを正当化するのは、ボトルに張られたラベルの力に他ならない。私たちは、シャンパンの味ではなく、そのブランドを買う。

突き詰めていけば、住む場所や学歴、職歴すら、心理的でプラセボでシンボリックだ。麻布、田園調布、大手町、虎ノ門といった土地の名前。慶応幼稚舎、東京大学法学部、ハーバードMBAといった学校の名前。三菱商事、ゴールドマン、マッキンゼーといった会社の名前。そうした住所や学歴や職歴は人々にラグジャリーな感覚を呼び起こす。こうした感覚は、住所の「本当の」価値や、学歴や職歴を担う個人の「本当の」魅力とは必ずしも一致しない。

プラセボとシンボルは現代日本のあらゆるところに溢れている。恐らく、食品表示偽装なんて可愛くて笑ってしまうほど、社会の大部分が真と嘘がないまぜになった「根拠のない価値」によって成りたっているのだ。それを社会から完全に排除することは不可能だし、そのあやふやさにいちいち怒っていたらきりがない。

だから私たちに求められるのは、世の中の仕組みを知り、無意味な価値を冷静に見極め、スルーできる能力だ。バリュー投資家が決して割高な出物は手を出さず、骨董の目利きが自分の買いたい品を見極めるように。。。。

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