ピッタの季節

20代で格付け会社で働いていた頃。40代のオジサン上司が「企業を調査するときはね。数字を見るんじゃないんだよ、人を見るんだ、直観で。年を取るとどんどん直観が冴えてくる」と言っていた。

オジサンと同じ年代になっってきた今。さすがに人の顔で企業の良し悪しが分かるようにはならないが、人の外見を重要情報とするようになり、外見をもとにさまざまな判断するようになったのは確かだ。

その人がどういう人かは、身だしなみやファッションだけでなく、声の調子、髪や肌のツヤや色、体型、後姿、歩き方、目の輝きなどの全てに表れる。運気の盛んな人、何となく気が淀んでいる人、神経質な人、狡猾な人、学者肌な人、怠慢な人、聡明な人、利に聡い人、感情に鈍感な人。

人の上に立つ人には容姿を問わず、どんな人にも一定の艶とオーラがある。肌の綺麗な女性は概ね心身ともに調った生活をしていると考えて間違いない。内面は全てジワジワと外面に現れる。見た目はその人物について極めて多くを語る。

アーユルベーダでは、体質をもとに人間をカパ(水)、ピッタ(火)、ヴァータ(風)、に分ける。粘液質のカッパは色白でゆったりしていて水っぽい。胆汁質のピッタは油ギッシュで力強い。体風質のヴァータはスマートで早口で、せっかち。多くの人はこの3つの体質の混合だ。

カパ、ピッタ、ヴァータは年代によっても配分が異なってくる。若年期はカッパが優勢、中年期はピッタが優勢になり、老年期はヴァータが優勢になる。若い頃は低血圧で朝に弱く、無口でおとなしかった人が、オジサンやオバサンになると人が変わったように元気になって朝からエネルギッシュに駈けずり回るようになる。老いてくると次第に身体から油分が抜けて小さく、乾いた感じになり、寒がりになる。ちなみに、この3つの配分は、1日の生活の中でも変わる。朝の6時から10時はカパの時間。たしかにこの時間はトイレに何度も行きたくなる。10時から2時はピッタの時間で、食事の摂取や活発な活動に適している。そして2時から6時まではヴァータの時間で瞑想や軽い活動に適している。6時から10時は再びカパ、10時から2時までがピッタ、2時から6時がヴァータとなる。季節で言えば、真夏がピッタで真冬がヴァータ。春から梅雨までがカパの季節だ。

私自身はもともとピッタ体質が強かったところに、中年に入ってピッタの要素がますます強くなっているようだ。どちらかというと暑がりで、競争心が強く、沢山のことを一度にやりがたる。すぐにカッとしやすく飽きっぽい、肉やフライドポテトが大好きだから、油断をすると食べ過ぎて太りやすい。アーユルベーダの処方箋によれば、こうしたピッタ体質の人には、涼しい乾いた気候が適しているほか、寒色系のインテリアやファッションが合っている。また人間関係では、カパ体質やヴァータ体質の配偶者や友人と一緒にいることでバランスが取れるという。そしてピッタを鎮める食べ物はオレンジや小麦、大豆ということになる。

寒色系の花器と花。

ピッタ体質の人に適した寒色系の花器と花。

年を取ってますます円熟して美しい外見になる人と、老化や劣化が激しく痛々しい人がいる。長年の内面の精神生活と生活習慣の積み重ねの反映なのだろうが、できるだけ自分を客観視して、ピッタ、ヴァータ、カパのうち自分の中で劣勢な要素を意識的に補うことで、心身双方のバランスの崩れを最低限に抑えられるように思う。たとえば、中年になってピッタ(火の要素)が増えて来たら、ジョギングなどで熱を発散させて、風の要素を取り入れたり、ヨーガで心を冷やして落ち着かせる。ヴァータ(風の要素)が増えたと思ったら、物理的に水分と油分の摂取を増やして、カサカサ感の進行を抑えつつ、休養の時間を増やす。カパが多くなって鬱々としてきた場合には、旅行や散歩で生活に変化を与え、ジメジメ感を吹き飛ばす--など。特定の要素が強くなり過ぎないように常に自分の状態を観察し、バランスを取るよう心がけるのだ。

アーユルベーダの体系全体を学んだり、その教えの一言一句を守って生活するのは難しいことだ。だが、その根幹にあるbalancingという考え方は、私たちをさまざまな局面で助けてくれるように思う。艶のある粋な老芸者やサリーをまとった威厳のあるインドの老婦人には、その年代でしか表現できない美しさがある。若さが失われていってもバランスを失わないで美しい老年期を迎えられたらいい。

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