トランサーフィンの振り子

私が大きな影響を受けた本に、ロシア人の物理学者が書いたトランサーフィンという自己啓発本がある。

「振り子の法則」リアリティ・トランサーフィン―幸運の波/不運の波の選択

自己啓発系の本はオナニーに似ていて、私たちはそれを壁にぶつかっている欲求不満の時に読む。読んでいることを他人に知られるのは恥ずかしい。大半の自己啓発本は読むだけで満足してしまって行動と実践に結びつかないゆえ、抱えている問題の根本的な解決には結びつかないことが多い。数ヶ月後には読んだことすら忘れてしまう本ばかり。

だが自己変革に結びつく本もある。この本は10年前に読んだのに、今でも読み返して書かれたことの意味について考えさせられる希有な本である。

トランサーフィンの中心概念は、『振り子(pendulum)』。

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振り子とは、家族、クラブ、学校、企業、政党、国家などのこと。それらの信奉者たちが自分たちのエネルギーを与えるようになると、振り子は大きく揺れ動くようになり、自らの決まりによってひとりでに成長を遂げていき、人々は知らないうちに振り子の利益のために行動する。振り子は信奉者たちのエネルギーを受け取って、それによって振幅を大きくする。

どの振り子も信奉者のエネルギーを奪い取り、彼らを支配しようとする。振り子にとって信奉者の運命などどうでも良い。振り子の一番の関心事は、その者の思考を占領することにあり、人の痛いところを突いたり傷つけたりすることにある。

振り子が引っ張って信奉者をびくりとさせる一番太い糸は恐怖である。ほかには不安や罪悪感、コンプレックス、正義感、自尊心、虚栄心、名誉心、愛情、反感、どん欲さ、気前よさ、好奇心、興味、飢餓感などである。

この世には、信奉者をネガティブな思考に集中させ、自らの生存と繁栄のためにエネルギーを吸い取ろうとする、ものすごい数の振り子が存在する。

トランサーフィンより筆者が抜粋

トランサーフィンを読んだことで、「社会システムやマスコミのプロパガンダって『振り子』なんだ」と腑に落ちた。

紅白に分かれて熱く競い合う運動会。私は小学校の時代から「なぜ私はたまたま紅組に振り分けられたのに紅組を応援しなければならないんだろう?」と白けていた。今でもオリンピックやサッカーでの日本チームへの熱い応援というのが苦手だ。日本が勝って、歓声を上げる。外国が負けて嬉しい。でも、次の瞬間、「それがどうした?」と思ってしまう。

集団に熱くなれない体質の私は、どんな会社でも強い愛社精神を感じたことがなかった。一人一人の同僚や上司には、好感や共感を持つことがあっても、「会社の目標」ということになると途端に白けて、気持ち悪いと思ってしまう。ましてや、「日本経済のため。。。」「社会貢献。。。」などという偽善的なお題目は途端に逃げ出したくなる。

あるいは働いたのが偽善と強欲と官僚的なエリート主義が支配する金融業界だったからかもしれない。もし私が小さな町工場で働いていたら、会社や製品に愛着を持って、その目的のために今でも尽くしていたかもしれない。

「振り子」が主導する仕事はお金のためのもので、そこで私自身の楽しさや幸福感を追求することはできない。

私はそう思ったから、20年近く身を置いた金融業界で、振り子に乗っ取られて過労死するまで働くこともなかった代わりに、振り子と同じリズムで揺れることで大きな成功を収めることもなかった。

もちろん、勤め人の仕事を辞めたからといって振り子とすっかり手を切れるわけではない。肩書きと組織への帰属と収入を失ったことへの不安感、「キャリアアップ」の機会を自ら捨てたり、学歴に対する親の投資を無駄にすることへの罪悪感、フリーランスであることの厳しさ。新しいことを始めるのには遅すぎるという焦り。それは頻繁に私を襲う。そうしたものを感じるとき、私の心は振り子に乗っ取られている。振り子は、「だから言っただろう。お前に自分の人生を選ぶ権利など出来ない。私から逃げるなど愚かしいことだ。所詮、お前の目的など達成できない。世の中の仕組みを知り、それに順応せよ。戻っておいで。それがお前の運命なんだよ」と私に話しかける。私は振り子の内部の人たちに対する劣等感と惨めな気持ちで一杯になる。自分の中のもう一人の自分が今の自分を絶えず批判し、責め続ける。

だからといって戻ったら、またうんざりする振り子のために自分の時間とエネルギーを捧げる羽目に陥る。

トランサーフィンによれば、大切なことは振り子と戦い、対決しようとすることではない。所詮、個人は絶対、振り子との戦いには勝てないのだ。するべきことは、振り子をさり気なく無視すること。その存在を忘れること。自分自身のギアを「ニュートラル」にし、自分の人生を所有する決意を持つこと。理性と魂を一致させること。独りでいることに安らぎや自信を感じること。恐怖感や不安感を払拭すること。あるはずのない束縛、依存関係を自ら作り出さず、他人との比較、過大評価を止めること。

そう、トランサーフィンはアドバイスする。

「振り子」というモノサシで周囲を見渡してみると、少数ではあるが、世の中には振り子から解放された状態で生きている人がいることに気づく。大仰に何かを褒めたり非難することなく、とらわれが少なく、ほがらかで、ごく自然に飄々と自分の人生を生きている人。そう。たとえば思春期を迎える前の子供たちは皆そうだ。

人生の前半生が荷物を増やしていく時期だとしたら、すでに40代後半は荷物を減らしていく時期に入っている。トランサーフィンの教えを実践して子供のように朗らかで穏やかなオバアチャンを目指そう。

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