シンガポールの暴動

今朝のニュースで知ったシンガポールの暴動。

12月10日(ブルームバーグ):シンガポールで約40年ぶりに暴動が起きた。同国では外国人労働者流入をめぐって緊張が高まっており、リー・シェンロン首相は暴動の原因などを究明し、外国人労働者が集まる地域の管理方法を検証する調査委員会の設置を命じた。

暴動は8日夜、交通事故をきっかけにインド人繁華街のリトル・インディアで発生。400人程度が関与したと警察当局が9日にフェイスブック上で発表した。リー首相は「こうした暴力および犯罪行為に弁明の余地はない」と声明で非難した。

シンガポールでは過去の積極的な移民政策の結果、混雑やインフラをめぐる問題がソーシャルメディア上で取り沙汰されるようになり、所得の不平等拡大もあっ て外国人労働者に対する不満が高まっている。政府はここ数年、企業に外国人労働者の雇用を減らすよう促しているが、それが逆に労働者不足を招く展開となっ ている。

シンガポール国立大学のビルフェール・シン准教授(政治学)は電話取材に対し、暴動は「これまでなかったことで、重大な転機となる出来事だ」と述べた。

運転手は逮捕

警察の説明によると、インド国籍の男性労働者(33)がバスにはねられて死亡したのをきっかけに暴動が発生。フェイスブック上の発表によれば、バスを運転 していたシンガポール人男性(55)は自動車運転過失致死傷罪で逮捕された。地元警察によると、暴動は数時間で沈静化し、鎮圧に際して火器は使用されな かった。

警察当局はインド人25人、バングラディッシュ人2人、シンガポールの永住者1人を逮捕したと発表。暴動を沈静化するため動員された警官約300人のうち22人と予備警察官5人が負傷して病院に搬送されたが、既に退院した。

タングリン地域警察本部は9日、リトル・インディアに配備する警官を増やすことを明らかにした。ルイ・タックユー運輸相は自身のフェイスブック上で、リトル・インディアでの酒類販売許可の制限を検討する考えを示した。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MXJTJY6JTSF601.html

シンガポールの2年足らずの短い滞在で心に残ったのはワーカーとメイドの姿だ。シンガポールは富裕層、外国人駐在員、ミドルクラス、労働者階級で構成されるカースト社会だが、最下層にいるのがワーカーとメイドである。建設現場の土方はタミール人などのインド系の労働者。そして家事労働、介護、子育てを担うのがフィリピン人メイドたち。

貧しい国の貧しい地方から出稼ぎに来た彼らは驚くほどの低賃金で肉体労働を担っている。私たち日本人はシンガポールに行くと、日本の数分の一の価格なのに清潔で美味しくて栄養価に富んだホーカーのチキンライスやフライドホッケンミーに喜ぶ。だが、そんなに安いホーカーフードでも、ワーカーには高すぎて食べられない。所得格差の大きさ、最下層の人々の圧倒的な賃金の安さが、安い建設コスト、子育てのし易さ、家事の外注のし易さなど、シンガポールの中産階級以上の人々に日本にない快適な生活をもたらしている。

最下層の人々は全員が単身だ。ワーカーは郊外の集合住宅に、メイドは雇用者の家に住んでいる。ワーカーやメイドは失業時は当然のこと、軽犯罪を犯したり妊娠したときにも強制送還の対象になる。ワーカーやメイドとしてやってきた人々の存在意義はひたすら安価な労働力の提供。彼らにはSingaporean dreamはない。教育のない彼らは機会均等の競争社会の土俵に立つことすら許されず、社会のお荷物となる日が絶対来ないように移民政策が設計されているのだ。ビル建設現場では日常的に簡単にインド人ワーカーが落下死しているが、それが報道されることは決してないとも聞いた。

こうしたワーカーやメイドの扱いは、非人道的、非道徳的に見える。だが、それでもシンガポールに働きに来たい人が後を絶たないほど本国の貧困と人口過剰、仕事不足は深刻であり、彼らはシンガポールで働けることに十分、満足しているのだとも聞いた。そうやってシンガポールで数年働けば母国に帰れば御殿が建てられるのだという。そうした目標に向けて真摯に働く人々を自分の尺度で測って「可哀相だ」と思うのは傲慢だと言う人もいた。

それでも、日曜日の昼下がり、川べりで互いに髪を切りあうタミール人ワーカーの人々や、入園無料の植物園にグループでピクニックに来てタガログ語で賛美歌を歌うフィリピン人メイドたちの姿には、胸に突き刺さる思いがした。外国人の子どもを育てながら自分は結婚せずに年老いていくメイド、酷暑の建設現場で過酷な労働をして怪我をして不具もろくな補償も受けられないワーカーの人たち。シンガポールの物質社会の目もくらむような豊かさと子どもたちの恵まれた教育環境との対比はあまりにもむごいものに見えた。

どんな国にも正と負があるが、汚い仕事のワーカーとメイドへの依存はシンガポールの負の部分であり、矛盾であり、脆弱性だと思う。確かに、シンガポール人は彼らを強制労働させているわけではないし、近隣国との間にある経済格差と労働力の需給を自国の発展にうまく活用しているだけだろう。大半のワーカーもメイドも、故郷の家族を思って辛抱して真面目に働き、送金する生活に希望を見出しているのだと思う。それでも、他者との間に存在する不条理で絶対挽回不能な圧倒的な格差と社会の壁に日常的に晒され続ければ、人間は傷ついたり怒ったりすることがあって当然ではないか。何かの拍子に自分を見失って怒りを無差別に発散させる衝動に駆られ、そうした人々の怒りが社会の秩序を崩壊させていくことはないのだろうか。

心を乱されるニュース。。。シンガポールの今後の社会情勢が気になる。

 

 

 

Share on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedInPrint this pagePin on Pinterest

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です