ゆるゆるの逆説

時代のトレンドは「ゆる、脱力、癒し、抜き感」に傾きつつある。交感神経より副交感神経。吸う息より吐く息。ノーネクタイ。エアロビクス、ジャズダンス、筋トレからヨーガ、ゆる体操や太極拳へ。

ITや交通手段の発達、グローバル化で社会のスピードがあまりに早くなり、余裕やゆとりが失われ、世競争が激しくなったことの反動か。

私個人の人生を振り返ってみても、大学時代、フランス留学時代、そして証券会社で働いているあいだ、「ゆるめると成功できない=引き締めなければ、ハイテンションでなければ、スピーディでなければ、絶えず学ばなければ、思考し続けなければ、アウトプットし続けなければならない!」という強迫観念があった。決して私が個人としてテンパっていたというだけでなく、時代の雰囲気でもあったと思う。息を詰めて頑張っていた私の身体はカチカチに固まっていた。朝早くからハイヒールを履いて、気分を高め、コンピューターに向かう。メールは一分でも早く読み、一分でも早く返さなければならないという思い。飛び込んでくる情報を即座に分析して、アウトプットしなければならないというプレッシャー。

もう一つの私の強迫観念は「ゆるめると醜くなる=女としての人生をエンジョイしたければ、絶対太ってはいけない!」だった。「太る=だらしない、モテない、幸せになれない人生」への恐怖から、私は食べ過ぎを恐れ、カロリー計算し、朝食を抜き、飲み会でも旅行に行ったときでも、常に他人と比較して他人より食べ過ぎないようにしてきた。

「他人に早く対応するべき」という強迫観念は、「早く行動しない人や変わらない物事に対する感じる慢性的な不満や不快感」につながった。「太ってはいけない」という強迫観念は、「努力しないでだらしなく太っている人」や「努力しないのに綺麗な人、のんきで幸せな人」への嫌悪につながった。

そんな風に、私は自分を締め付ける分だけ他人に対してもキツキツで、対人関係の債権債務に敏感で、自分の努力に報いてくれない世界に漠然と不満を持ちつつ、それでも「緩めちゃ終わりだ!」と叫び続けて来た。

緊張することと社会的成功、緩めることと太ることはまるで別ものどころか、真の世界はむしろ私の信じて来たものとあべこべだということ。肩に力を入れてカチカチに固まっていれば、豊かな思考も出来なければ、視野も広がらないこと。まず息を吐くこと。肩から力を抜いて、持っているものを手放すことから始めること。怠けることと緩めることは全く違うこと。

それらを私はようやくここ数年の体験で学びつつある。

端的にはファッション。定番のペンシルスカートにハイヒールのスタイルを手放した。

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シルエットを隠すブカブカ•ファッションは、精神を弛緩させ、スタイルをだらしなく見せる。10年前の私は硬くそう信じていた。

だが、最近、桐島かれんさんのHouse of Lotusのインド木綿のワンピースと出会って、価値観が変わった。House of Lotusのワンピースは普通のワンピースと比べると驚くほど胴回りが太い。スカートの丈も長く、ダラ〜っとした感じだ。

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着てみると、案の定、ゆるゆるで、まるで身体を締め付けない。ところがだからといって太って見えるということは全くない。布の量が多くて、重力によって肩からストンと落ち、腹部や臀部が目立たないデザインだからこそ、女性の骨格のシルエットが綺麗に見えるのだ。

こうしたコンフォタブルでエレガントでユニークな服をデザインし、提案している桐島かれんさん自身、4人の子供を生んだ50歳にして現役のモデルであり、重力に逆らわない極めて上質の美しい体型している。かれんさんが体型を維持するために、息を詰めて緊張してキツキツの生活をしているようには見えない。逆に十分に息を吐いて脱力し、欲張らないことを知っているからこそ、決して食べ過ぎず、精神も安定していて美しいのだ。かれんさんのパーソナリティやライフスタイルから生まれたこの服は、私に「ゆるゆるの逆説=ゆるいからこそ綺麗」を教えてくれた。

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私が作っているpemaのアクセサリーも基本的にゆる系だ。

ファッションだけではなく、生活全般も徐々にゆるモードに転換中。

来たメールは必ずひと呼吸置いてから返答する。Etsyやブログの閲覧数やフェースブックの「いいね!」の数は確認しない。facebookは気が向いたときだけ開き、気軽にアップし、「いいね!」を押し、「いいね!」を押したこと、押されたことは、すぐ忘れる。人間関係の貸し借りをタイトに意識しすぎない。自分の行動に他人の承認を期待しない。宮沢賢治の「ミナニデクノボウトヨバレ。。。」の心境に近づく。

ベストセラーのこの本もある意味、手放すことを勧める本といえる

黄色になった横断歩道は無理して渡らない。

スーパーのレジでは空いている列を探して血眼にならない。レジではゆっくりお財布を開き、ゆっくり支払いをして、ゆっくりお財布を閉じ、店員さんに「ありがとう」という。

万事、淡々と、ゆっくりと。決して息を詰めない。

というわけで、明日から来週火曜日まで、野尻湖でゆっくりしてきます。

良いお盆をお過ごしください。

下山明子

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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