なんちゃって仏教徒

般若心経を読んだり聞いたりするのが好きだ。「これも幻、あれも幻」という、ニヒルでアナーキーな感じが。お葬式で聞くと「そうだよね、諸行無常。死んでも生きても同じね」という気分になる。真言宗の護摩焚きの儀式などで、太鼓を叩く大音声と燃え盛る炎とともに聞く「ギャーテーギャーテー」によって体内のエネルギーが上る感じがする。

響きが好きなだけではない。般若心経くらい短くて巷の解説が豊富なお経だと、一応、その意味も分かる。300字足らずの中に織り込まれた縁起や空の教えは、悲しく辛いことがあったとき、誰かを憎みそうになったとき、嫉みそうになったとき、大きな失敗をしたときに役に立つ。「物事には実体がなく、全ては因に依存して生まれる果に過ぎない」と自分に言い聞かせる。

「般若心経のアナーキーさが好き」、という延長でチベット仏教を勉強しているのだが、正直、勉強は壁に当っている。「空」や「縁起」はしっくり来るのだが、「輪廻」「発菩提心」はしっくり腑に落ちないのだ。

僧侶と哲学者―チベット仏教をめぐる対話

↑父親は著名な西洋哲学者、息子はチベット仏教僧侶。とかく何回な仏教の教義や輪廻など仏教の「不思議」が息子から父親に分かりやすく説明されている。といっても、父親は息子の説明に最後まで納得しないのだが。現代日本人にとって仏教は日本語よりヨーロッパ言語の方が分かりやすいし、合理的な無神論者の西洋人の素朴な疑問がしっくり来る。

輪廻は、肉体が滅んだ死後も人間の意識は消滅せず、他の人(生物)の肉体に乗り移りながら継続する——という考え方だ。チベット人は「より良い転生をしたい」一心で、生前に善行を積む。悟りとは「生まれ変わって苦しみ続ける状態が止み、永遠に苦しむことのない状態に行き着くこと」にほかならない。

「転生=意識が人から人へ乗り移ること」というと、ついゲゲゲの鬼太郎に登場する墓場に浮かぶ丸くて白い玉を想像してしまう。でも仏教は「実在としての霊魂」を否定しているから意識は「玉」ではないのだ。では、転生し続けるのは何? 何度聞いても良く分からない。

発菩提心(ほつぼだいしん)も理解が難しい。発菩提心とは「衆生一切を救いたいという熱烈な慈悲の心」を持つこと。大乗仏教の修行の基本だ。

だが。。。。

「衆生一切を救いたい心」と一言で言うが、それって本当に普通の人間に自然にわき上がる感情? 衆生一切を「生きとし生けるもの全て=世界70億人+意識を持つ動物」、慈悲を「(真実を知らない生きとし生けるもの)憐れみの心を持って愛すること」と定義すると、発菩提心はあまりに壮大過ぎる。電車でおばあさんに席を譲ったり、ユニセフに寄付をするのは単なる親切や道徳心であって、発菩提心ではない。

ところがダライラマ法王の法話や仏教のお経には、「空」「縁起」「輪廻」「発菩提心」のキーワードがシームレスに登場する。法王の話は、「当たり前の道徳的講話」から「オカルトとしか思えない話」に飛躍する。法王の話を聞くたびに、「仏教のニヒルで知的な感じが好き」というだけの私は仏教徒ではないのだと感じる。

法王は「分からなくて当然。無理をせず、ステップバイステップで仏教を勉強していきましょう」と言われる。でも輪廻を信じたり、発菩提心を持つためには、理性的に勉強して、段階を踏んで努力するだけでは超えられない「信じる力」「降ってくる何か」が必要だ。

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↑昨日の法王の東京での法話「空と慈悲の教え」

考えてみれば、私は幼少時からキリスト教文化にどっぷり浸かってきたのに、処女懐胎やキリストの復活の不可解さが信じられなかった。それでキリスト教徒になり損ねた。

仏教も同じ。非合理的な部分が飲み込めない。引っかかってしまうと信仰心は生まれない。

法王様の言葉に従って、これからもチベット仏教の勉強を続けるべきだろうか?おそらく、いくら一人で本を読み続けても、それは知識の蓄積であって信仰には至らない気がする。

じゃあ単に般若心経やダライラマ法王やお香の匂いが何となく好きという「なんちゃって仏教徒」で居続けようか?

いや、実はもう少し踏み込みたい。数千年続く仏の教えを理解したい。救済されたい。知り合いのチベット人のように晴れやかで清らかな心になりたい。

恐らく今の私に必要なのは、分かりやすい言葉で仏教の教えを説く尊敬できるラマ=宗教者との出会いや、仏教の話が気軽に出来る仲間かも。

欧米のような気軽なチベット仏教センターが日本にもあればいいのに….

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