お地蔵さん

初めてネットで買い物をしたのは2003年だった。楽天でおそるおそる使い捨てコンタクトレンズを買った。楽天は過去の購入履歴が全て出てくるから、たまに自分の買い物史を振り返るのも面白い。

この10年、私の全消費に占めるネット比率は高まる一方だ。今では、本はもとより、インクカートリッジやプリント紙などの消耗品、洋服、靴、バッグ、家具、アフリカの骨董、アイルランド製のオートミールまでネット経由の購入。海外サイトからの直接購入を含め、これまで決済や配送のトラブルは一切、ない。店舗に行く交通費も時間も節約できるし、品揃えや価格でネットは圧倒的に優位だ。スーパーや駅前店舗など以外でわざわざリアルの店舗に足を運ぶという習慣は私の中で失われた。一方、仕事もプライベートも、人とのコミュニケーション手段は圧倒的にメールだ。年賀状以外、葉書や手紙を書くことは殆どなく、自宅の固定電話にかかってくる電話は実家と義理の両親だけ。来る手紙は役所や金融機関からの連絡やダイレクトメールだけ。

How_Computers_Work

夕食にキムチを食べた翌朝、ニュースで小泉元首相の姿を見る。久しぶりの小泉さんの顔と、キムチから、ふと、2002年の日朝首脳会談と拉致被害者の帰還の光景を連想する。「ああ、あのときの蓮池薫さんや曽我ひとみさん、今ごろどうしているだろう?」という思いが頭をよぎる。昔ならそこで終わり。でも今はネットで検索すれば事実を確認できる。ググってみると蓮池さんは作家になっているようだ。蓮池さんの本をアマゾンでチェックしているうちに、今度は面白い書評を書いている人を見つけて、今度はその人のブログに飛ぶ。ブログにアップされた記事を自分のFacebookにアップして紹介したついでに、今後は、友人のFacebook投稿記事にひととおり「いいね!」を押し、次にTwitterをチェックする。。。。

気が付くと1時間、2時間はいとも簡単に失われる。その間、私の脳はフル稼働だが、身体は不動のお地蔵さんだ。会社でも家でも半日間、完全にお地蔵さん。席を立つのはトイレだけということが多い。仕事、買い物、交友、娯楽。。。。。どれも画面を見て、キーボードを叩いて、また見て、ということの繰り返して作業が完結するのだ。一つの作業が終わっても、次から次にネット上でやりたいこと、やるべきことが出てくる。

そうした積み重ねの自然な帰結は慢性的な運動量不足だ。数年来、お地蔵さん生活を続けたおかげで下腹部と腰回りに付いた脂肪の塊は、もう多少のエキササイズでは落ちない。

デスクワークは昔からあった。でも、ネットがある時代とない時代、ネットで複数のことができる時代とできない時代では、「お地蔵さん度」が違うように思う。ネットがない時代、机の上には辞書、書類など物理的に許容される情報しかなく、PCの中の情報もPCに記憶されたデータだけだ。新たな資料を探したり、他人とコミュニケーションするには、少なくとも立ち上がって本を取りにいったり、受話器を取って声を出す必要があった。昔はデスクワークに疲れて手持ち無沙汰なときは、家の中やオフィスをうろうろしたり、煙草を吸いに行った。今はPC上の退屈な作業の気分転換も、PC上で完結する。ネットザッピングだ。無責任に、フワフワと行うネットザッピングは、雑誌を買って読むよりずっと多くの情報にアクセスできる。しかも無料で。雑誌もすっかり買わなくなった。。。。

ネットは本来なら時間の節約につながるはずだ。実際、ネット取引によって郵便局、銀行、本屋、デパートに行かなくなった私の生活は、昔よりずっと効率的なはずなのだが、なぜか、ゆとりが生まれたと感じない。節約された時間はそのままPC上の作業に再投資されているのだ。

ネットで節約された時間は、ネットではなく運動に投資されるべきだろう。なぜなら、ネットは脳には気持ちの良い状態を生むが、肉体に極めて不自然な状態を強いるからだ。ネットで費やす時間が増えれば増えるほど、筋肉は本来の自然の条件と異なる状態に晒され続け、硬くなり衰えていく。血流が衰え、行き場を失った脂肪が下腹部に滞留する。

朝から晩まで一定の姿勢を保って瞑想するチベットの僧侶は、同時に血流を良くする体操を修行の一部としていたという。

私たち、PCの前のお地蔵さんたちも基礎代謝量を保つためには、特定の時間にPCの電源を潔く切って、サイバー空間と縁を切って外に飛び出して行って最低30分くらいは無心に走ることが必要だろう。1週間に一度、ジムに行くのでは足りない。。。毎日、筋肉を動かさないと。

未曾有のマラソンブームが長く続いていること、世界中で走る人が増え続けているのは、ネットが世界中に多くのお地蔵さんを生んでいることのコインの表と裏だと思う。

毎日走る習慣がなかなか身につかず、出不精になりがちな自分に自戒の意味をこめて書いた。

良い週末を!

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