あなたはどんな蛙の子?

第一線の料理研究家はたいてい、料理研究家の子供か、料理好きな母親のいる家庭に育ってる。

料理研究家辰巳芳子さんのお母様は、料理研究家辰巳浜子さん。同じく料理研究家コウ•ケンテツさんのお母様は、やはり料理研究家の李映林さん。栗原はるみさんは、料理が素晴らしく上手なお母様を持っていらっしゃる。ウーウェンさんの北京の家庭料理も、お母様から引き継がれたもの。

モデルの桐島かれんさんはHouse of Lotusというアジアやアフリカの雑貨を中心とした素晴らしくセンスの良いお店を広尾に開いていらっしゃる。お母様の桐島洋子さんは自立したシングルマザーとして有名な人だが、実は桐島洋子さんの著作の真骨頂は、その主張よりも、彼女の好むインテリアやら料理やら旅行の洗練されたディテールの提案そのものにある。桐島洋子さんは、「上品な家庭に育ったお転婆さん」キャラなのだ。そして洋子さんの趣味の良さは、富裕で国際的な実業家だった戦前の桐島家の生活から生まれたものなのだ。

活躍する人に「二世」は多い。銀行員の息子が銀行員だったり、外交官の息子が外交員だったり、隠れた二世は有名な二世よりはるかに多い。

平和で安定した世の中が続くなか、二世が親の「のれん」や「地盤」を受け継いでいる面もあるだろうし、遺伝的形質もあるだろう。

でももっと重要なのは、二世のみに可能な情報の蓄積だ。

どんな人も物を感じたり、概念認識したり、意見を持ったり、価値観を持っているが、その元になるのは、過去に獲得した無数の情報であり、そのなかで子供時代の情報というのはとて多いのだ。

自分が自分の感覚だ、意見だ、と思い込んでいるものは、実は蓄積された情報をかき混ぜているに過ぎないことが多い。

脳内メモリーが白紙に近いの状態のとき親から聴いた言葉や親の言動が情報として脳に書き込まれる。書き込まれた情報は無意識の記憶として刻印される。私たちはそうした情報を使って現実や将来に対するイメージを紡ぎだす。

とりわけ、味覚や色彩感覚といった原始的な感覚は子供時代の経験が決定的なものとなる。

蛙の子は蛙、料理専門家の子供が料理がうまくなるのは自然だ。センスの良い女性を母親に持った女性がセンスが悪くなるのは難しい。

逆にまずい料理を食べて育った人が長じて料理研究家として頭角を表す可能性が限りなく低い。子供時代にルーツを持たないことを生業にしている人と、ルーツを持つことを生業にしている人の間には大きな情報量や認識能力の差があるからだ。

これは、如何ともしがたい人生の現実。

では、親から受けたかったものを受けられなかった人はどうしたらいいのか?

どんな人も親がいる何かの「二世」ではある。

だからまず、自分が何の「二世」で、何の「二世」でないのかを自覚すべきだ。自分が持つものを客観視すること。そして、特定分野で他人より抜きんだければ、欠けていると自覚された情報を自力で蓄積し、より優れた行為、認識、行動に至る努力を怠らないこと。集中して時間を割き、自分を投入していくこと。それしかない。

スポーツ選手なら少しでも人より多く練習する。学者なら沢山の本を読む。骨董の目利きになりたいなら誰よりも多く道具を観る機会を作る。

未来は蓄積された情報のみに基づいて作られる。

さて、あなたはどんな蛙の子ですか?

私の作るエスニック料理はまだ下手。情報の蓄積量が少ないから。

私の作るエスニック料理は下手。情報の蓄積量が少ないから。得意なのはスパゲティ•ミートソースや肉じゃがといった親から覚えた昭和の味。

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